たまには欲しい人徳と酩酊obedience

自分としてはちょっと珍しい出来事に出会ったのでメモなど。

いつも通り自分中心自分語りかつ短気な人間の編集部不信を含むかもなので、そういうのがお嫌いな方は避けてください。

 

 

出してる刺青のフリー素材を商業漫画作品に使って頂きました*1。

竹河継『濡れ刃に花びら』

 

 

こんな過疎地で宣伝しても効果はないと思うんですが声を大にして言います。読んでね!!!

画像を引用しないのは、jimdoの仕様上非SSLサイトのURL*2を埋め込みできないのと、ジャンルと傾向的に私が恥ずかしいからです。世間一般的に恥ずべきものではまったくありませんが、私の隣に来るとが恥ずかしい。例えていうと避妊具だろうがワンカップ焼酎だろうが平気で店頭購入できる人間が漫画誌『りぼん』を買うのを躊躇うようなものです。

 

フリー素材には過剰な対価も頂けました。ありがとうございます。

 

ところでこの素材使用までの流れが面倒でしてね。前述の通り対価を頂けたので不満は一切ないんですが、今後のために記録を残しときます。紋々素材や反社集団を描く際には皆様ご留意ください。

出版社、特に集英社の漫画編集部は紋々のデザイン"パクリ"に敏感になっているそうです。なのでデザインの出所には注意を払い、実在のどなたかのパクリになっていないかチェックが入ります。 

 

ここからは私の当て推量。

↓に引用したTweetツリーが言及してる事件がきっかけだと思うんですけども、残念ながら元ツイートは非公開になってて見えないんですよねー。紋々好きは覚えてるでしょ?(無茶振り)(私も当時読んで覚えてた…からこの予想を書いてる訳で当該事件が原因という確証は勿論ない)

 

とある漫画家がネットの刺青画像を真似て描いたところ、その持ち主or彫師が意匠権だか著作権だかあるいは法の外の理を以て出版社に抗議しトラブルになった、と。刺青は依頼者が自分の肉体を素材にしその意向を元に彫師とともに図案を決めて彫る…という特性上、デザインのクリエイビティが発生するだけでなく個人の外見的特徴ともなり得るので。除去技術が発展したとはいえ、気軽に改変可能なものでもないし。 

 

なので、紋々を描く人はクリエイターとしてのごく一般的な意味で"パクらない"という常識に加えて、更に、日本社会の文脈上でも個人の尊重という普遍の倫理面でもセンシティブ、かつ問題になったときのリスクが大きいことも承知したうえで制作してください。

 

 

 

 

 

で、話を戻して今回の私の素材。

漫画家氏からご連絡をいただきまして。曰く「アナタのフリー素材を使いたい。ついてはオリジナルデザインであると確認したい」と。

…これはこれで困ってしまいましたよ。パクってない証拠って難しくないですか?オリジナリティについて語るにも、描いたの2017年?とかだし。記憶の彼方ですよ。

勿論「閲覧可能な類似画像を手当たり次第に参照したがパクリではない。しかし私がそう主張することは作家様にとっては何の担保にもならないはずである」と丁寧(当社比・主観)にお返ししました。

しかも漫画家氏がどういう改変するか分かってなかったから、結果的には不要だった部分について詳細に説明しちゃったよ!的外れな回答はずかしいなちきしょー!

 

もちろん訴訟リスクがあるなかで素材の素性を確認するのは当然ですよ。

ただその検証方法として、素材制作者へのヒアリングという確認方法が妥当/有効か否か*3は、ちょっと考えてほしいですね。個人はともかく、組織としての編集部に。

 

任意の確認、特に回答の自由度の高い本人の釈明というのは、その人物が社会常識について(問う側と)共通基盤を持っていて虚偽を述べず理性的であることを前提にしないと正当なものになり得ません。その時点では共通の利害関係を持たない、見ず知らずの他人にそれを期待するのは危険すぎやしませんか?

悪意あって盗作および素材(利用者の手元で爆発する時限爆弾)の配布を行っていた場合、当然私はしらばっくれるもしくは巧言を弄し責任逃れの嘘をまじえて使用を勧めるでしょう。あるいは盗用について著しく無理解・知識不足だった場合、一般的な侵害の認定基準をまったく無視し「自分の手で描いた」旨の回答を返すかも知れません。わりとしばしば同人屋の間で話題になるじゃん…原作や公式画像をモロパクして「何かマズかった?」って反応のナイーブちゃん。。。

そもそも伝統図案というオリジナリティ判断が分かれる題材で、ありうる糾弾を全て予想しそれを回避することが可能でしょうか。私には無理です。最低限自分が抗弁できる、自分が責任を取れる範囲のことしか考えて描いていません。

ゆえに先述の回答です。

 

―――結果、編集部Go!が出たんですけどね。

それでいいのか。いいんだろうな。………というかですね、その後素材の使用例のコマを見せてもらったらですね、改変が加わっていて、素材の面影がない訳ですよ!ということはもし私が盗作していたとしてもその盗作元との類似や重複は偶然以上のものにはなり得ないのでは!?!?!?まぁレイアウトは”カブる”可能性があるけど、モチーフの違いや要素の入れ替えを措いてレイアウトの類似まで突き詰めたらパクリの要件から外れないですか???

よければ比較検証してみてください。元素材の麒麟刺青と漫画内の刺青デザイン。(といってもはっきり写ってるシーンまだ無いっぽいんですけどね。私が別に見せてもらった画像にはあるんですが)

そもそも素材と回答要りました??いやこちらとしては思わぬ報酬があったし、ご覧の通りありがたいことなんですけどね。この手間はいったい…という拍子抜けはありました。正直。

 

念のため補足しますが、漫画家氏は終始丁寧でこちらを気遣ってくださいましたよ。「失礼な質問して申し訳ない」出版社の意向でよんどころなく、と。

 

ただ原理的にリスク回避策としては不十分だし、そういう手段をとらせる組織ってどうなのさとは思いましたね。万一パクリの訴えが出されたときに、言質さえとれていれば詐欺被害者の体で出版社の賠償責任は回避できるにしても、作家にとっては"他人のデザインを(素材配布元を介して)パクってしまった"というだけで多大なイメージダウンになり得るし精神的負担は避け得ない。何か他にやりようあっただろ!とは思いますな。

 

まぁともかく自分の素材がプロの作品になんらかの影響を与えたというのは嬉しいものですな。

ちなみにいちおうファンアートという体で↑の絵を描きましたけど、刺青のデザインまったく違いますからね。いや(改変済とはいえ)自分のネタを模写してもしょーがないじゃん。本当の姿が見れるのは漫画でだけ!link先へGo!

 

 

ついでに

件の漫画家さん、すごく気を使ってくださってね…しきりと「pixiv経由でごめんなさい*4」みたいなこと書いてくださったんだけどね……いやさすがに今 pixiv使ってるだけの人に憤慨したりはしないですよ。いくら場合によっては狂犬じみた振舞いをする私でも。一応事件の child molester 当人はトップからは消えたので。組織としての落とし前はつけてないけどな、pixiv。まぁ実際のところ私は今回も面倒くさい回答したし(pxvにかかわらず平常運転である)、先方からしたら当り散らされた感はあったかもしれません。ごめんなさい。

いやまじめな話、そこまで悲憤慷慨するならいまだにpixivに素材置いておきません*5から。

 

損得計算で言ったら、日本語圏の所謂二次元コンテンツの宣伝や市場調査や素材探しでpixivを利用するのは正しいと言わざるを得ない訳ですしね。

 

全ての水物商売作家に伊東七つ生氏と同じ高潔さを期待するのは間違ってるでしょうよ。そりゃそうでしょうよ。

 

 

 

 

 

 

 

*1 むやみやたらに謙る訳ではない場面で「~して頂く」って書くの嫌いだったんですけど、確かにこれが一番楽ですわ。「素材が使われました!」だと一瞬無断使用の糾弾にも見えるし、「素材を使った商業作品が世に出ました!」だと私の素材がなんかめちゃめちゃ重要な役割を果たした(と言ってる)ように読まれかねない。

まぁ「~させて頂きます」は冗長なので可能な限り「~致します」に置き換えたほうがいいと思うけども。

 

*2 集英社さんよ、漫画サイトmee はSSL化してないんですかい。重いし。サイトよりもアプリで読ませたいという意図はわかりますけども。文春だってこないだ http→httpsになったよ?

 

*3 まぁね、出版社側としては言質さえとれりゃいいんでしょうけどね。「素材配布元の申告に騙された/錯誤があったため責任はない」っていう。我々が契約時に交わす「契約者は反社会的組織とは無関係です」っつー紙切れと同じで。

 

*4 不本意ながら冒頭でpxvにlinkつないでるのはそういう事情です。おんなじ物はDAでも配布してるのでそっちから閲覧&落としてくださいね!

 

*5 私とて使われよと素材配布しててそのために効果的な媒体とそれを使うデメリットを勘案してる訳ですよ。

私は、ある作品が―どんなに技量の点で稚拙なものであっても―見た人間に何らかのインスピレーションを与え、新しい・面白い作品の芽になる事実を知っているし、どの作品にもその可能性を信じているし大事にしています。ヘタクソながら下書きを含む自作を公開したり素材を配布しているのはそのためです。

対して、二次創作はそれ自体が"コンテンツ消費"という色々な面で"危なっかしい"娯楽であるうえに、私が好んで描いていたのは―現実においてpixiv社長の性暴力と地続きの―セックスファンタジーを含んでいる作品でした。それをpxvに置き続けることがどういう意味を持つか。

散々語られたことなので雑な書き方するけど、性暴力にまつわる幻想を強化し"二次元"を言い訳にそれを称揚し拡散する行為に加担することになる。「現実では性暴力を許容しない」という建前を破壊した組織の下で架空の性(暴力)を甘美なものとして描き消費する、そういう娯楽を娯楽として確立する。価値観を醸成する―――性暴力を許容するダイナミクスへの加担じゃん。やってられねぇよ。

 

そういう訳で素材はギリギリ残してるけど他作品は撤去した訳です。まぁ今後は余程のことがない限り素材も投稿しない予定ですし。

2020/7/2 追記

 

自分でも忘れてたんですけど、私配布ページに"ヘイト扇動・嫌がらせに使うんじぇね―ぞ"って書いてたんですね。使用許可の話が出たとき、漫画の内容にそれが該当するか否か確認するの失念してましたわ…

結果的には、そこクリアしてる漫画*6でよかったんですけど。

 

世の中には大手出版社掲載/企画etc.であっても、クソな制作物はたくさんありますからね。一旦使用許可基準を示した以上はちゃんと守らないと。つぎからは確認します。反省。

 

 

 

*6 大変失礼ながら、あのジャンル―少女漫画の一分野なんだろうが呼称がわからん―自体が女性規範の再生産および支配-被支配関係を男女間恋愛のステレオタイプとして糊塗する文化形成に加担していると考えています。そして当該漫画はおそらくその価値規範から脱却しているとはいえないでしょう。でも、まぁアリかなと。少なくとも素材配布時に想定していたレベルの危険な表現ではないと考えています。承認後の確認な訳だけど(最低)。未成年女子の意思選択がちゃんと描かれてたのでおそらく大丈夫。