* 乱七 で七緒性転換だったけどもこれくらいなら女性のままで全然問題ないレベル
2011年に下書きに放り込んで放置していたものですね。
「なーなーおー」
ぐたりと机に投げ出した躰は艶かしくて、声も確実にわたしの柔らかいところをついてくるもので、業務真っ最中のこの場所には相応しくない。もっとも、室内に部下とていない深夜残業だけれども。
「あーそーびーまーしょー。つまんなーい。たいくつー」
普段なら退屈をごねる前に昼寝でも始めようものを。常から威厳と遠慮をどこかに不法投棄してきたような態度だが、それ以上だ。第一、どれほど馬鹿なことを言っていても、自分のことが処せるだけの大人ではあるのだから。―――それをしないのは相手が必要なのだろう。
「…馬鹿なことを―――っ」
唐突に、書類を捲っていた指を掴まれた。まとめて。先の姿態からは想像のできない素早さ。
「―――七緒、ってば」
声から笑いが消えた。かえって焦燥でも含むような。
ごと、と文鎮の転がる音がした。机上にのりあげた胴。驚きを隠すために伏せたままの視線の先、金の髪が散る。その穂先が書いたばかりの文字の上を掃くのが。
「………遊ぶ?」
視線の先、躰が移動する。豊かな胸乳、鎖骨、顎、唇、そのうち瞳がおりてくるはずだ。いっそこちらの顎を掴んで上向かせたなら拒絶できようものを。
視線が、合う。唇の動きさえ見えない距離。
能面のような顔をした自分が、身を引かないのは何にとらわれているのか、何を期待しているのか。
「アンタと、あたし」
視線を固定したまま、掴んでいた指を引き寄せる。顔が引いた。唇に触れる室温の低さに、吐息がかかる距離だったのをはじめて知る。
うつくしく縁取られた唇と自分の指の先が触れ合うのを見た。濡れた粘膜が一瞬、ひらめくのも。その唇が、猫の爪のかたちに歪む。微笑は何故こんなふうに皮膚を傷つけるものに似るのか。
再び、視線が同じ高さで絡む。近い。その瞳が閉じられたところまでは、見ていた。
「――――っ!」
咄嗟に、顔を背けた。その一瞬後に頬に触れた自分の指と、蘇ったその指先の痛み。くちづけの代わりに自分の指を押し当てられたのだと気づいたのは、盛大な笑い声の爆発を聞いてから。
「――あっ…ははっ!……もー可笑しい、アンタずっとクソマジメな顔…っで、全然取り合ってくんないんだもん」
漸う指の痺れと自分の見ている自分の指が一致した。それまでそれは乱菊の一部だった。
「ごめんねーちゃんとしたかった?」
呆然と、何かの欠落したような顔をしているだろう自分は。多分、普通の男ならここで乱菊の胸を鷲掴みにするか、頬を張り飛ばすか、その両方なのだろう。
「…お帰りになっては?」
未だ肩を震わせている乱菊を見つめて、何故こんな風に冷ややかに話せるのか。
振り返った顔は涙さえ浮かべていて。
(さっきはそれが情欲に潤んだ瞳に見えた)
「そーするわ。じゃあね」
誰もいない執務室、握られていた指に感じる、外気の冷たさに互いの肌の火照りを知る。
それはすぐに引いて、乱菊の痕跡すらなくなった指をもう一度握りしめた。
(野卑な男のような振る舞いを期待するのなら、恥をかかせるな、と罵ってくれればよかったものを)
ED七緒と乱菊さん
(いや若年層向け読み物における 男=性欲の塊 という"お約束"が過剰なのが嫌いなだけですが)
それ言わなきゃ解らんわな。ところで**なしとか%%切とか宦官とか宮刑とか大好きですが。
これどっちかつーと夜砕じゃね?
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