自分は、胸のサイズなどという些事に、そんなこだわりを持つ人間ではなかったはずだ。

友人がソファに伸びてるいるのを前にして、七緒はわざとらしくごちる。

「…貴女のせいです」

「えー」

「コンプレックスと呼ぶほど、そのボリュームの有無をを重要視してはいません。

むしろ、こんなものが常に目の前に晒されているから、口に出すのに抵抗がなくなってしまったんです」

「ええー」

指差せば、その胸の持ち主はわざとらしく唇を尖らせてみせた。持ち込んだ煎餅を横咥えにしていなければ、あざとさがさぞ鼻についたことだろう。 

「あーあ誰もが羨むこのプロポーションが一番身近なあんたに対しては無駄になるのねー」

「そうでもありません。貴女の身体好きですよ」

「え」

「あなたが、先天的に綺麗なスタイルと美貌を―すみません。吹き出しましたけど今のは本心ですよ?―もって生まれたにしても、それを維持するために相応のコストを費やしかつそれを活用するセンスを磨くべく努めていることも、それに見合うだけの知識とスキルと当意即妙の機転と他者からの侮りを許さないための自律心をお持ちであることを、私は知っています。

そういうところを含めて、貴女の身体は綺麗だし好ましい」

「…………」

「何か問題が?」

「ないけど…

でもアンタ、自分より胸の大きい相手は嫌だって言ったじゃない」

 

「あなたはいいんです。あなたが私に望むであろうものは、胸の大きさじゃないってわかってますから」

 


おかしい…乱菊さんが死ぬの生きるのってシリアスな話してたはずなのに…。

 

2014/4/2?