にょたですよ!女体化!! そうみえなくても!

 

嫌いなひとは避けてくださいね~

「ちょ、おま!これマジ!? ホントに胸ある!」

「見せるな!開けるな!バカか、君は!!」

 

 

I'ma give you a look you gon' memorize

 

 

体育祭も中間考査も過ぎたその日、黒崎一護は招かれるがまま浦原商店を訪れ、怪しげな―――むしろ怪しさを感じなかった試しなどないのだが―薬を前に端坐を強いられている。 見慣れた浦原商店の文字と、彼には読めない印が、ラベルにある。不審といえばこれ以上の不審さもない。

「何だよ、これ」

「虚化対策のひとつッス」

「…ホントか?」

「より正解にいえば、対策のための実験てトコロでしょうかね」

「実験…」

げんなりと、眉間の皺を深くしつつ肩を落とす彼にかまわず、金髪の店主は続ける。

「アナタ自身、ほとんど伝承のなかにしかいない真血ですし、そのうえ生体のまま死神化したなんて前代未聞。その過程で魂魄がどう変化したかなんて、今実際に目にしているアタシでさえ理解出来てマセン。 まして、理論上にもそんな風に死神化するなんて考えられた験しがない。 アナタの変化、抑制のメカニズム、霊力そのもののみなもと、なにより不可逆のはずの、虚としての覚醒と、生身の人間としての生、全て並立し得ないと言われていたそれらがその身に起こっている。 理論上あり得ないんです。少なくとも既存の学説では」

「これまでの、我々の魂魄生化学の基礎は、死神ないし整の魂魄は虚のそれと分離し、決して交わらないものという前提に立っていました。むしろ観念論的に、対立するものだとさえ説かれている」

…現象への理解に先んじて理念を説くなどおこがましい、と、珍しく浦原が口の端に苦さをにじませたの見てとる。

「アナタの存在はその前提を覆す。 分化した後も、二つの―――二つの別のもの、としか、従来の理解では呼び得ないんです―――魂魄の間に連続があるし、その間で意思が移行しさえする、」

「基礎理論の組み立てからいきなり臨床実験なんて、乱暴とお思いでしょうが、アナタの場合実際に現象を見ていくしかないというのが正直なトコロです」

「…つまり出たとこ勝負でやれることをやってみるしかねぇと」

「そゆことデス。ちなみに今回のそれは、人間の発生学理論を基にしています。といっても勿論霊子にそれをそのまま適用できるわけではアリマセンので、アナロジーとして、というレベルですが」

「いちお聞くけど、これどんなふうに効くんだ?」

薬瓶を摘みあげる。発光しているかと見紛う程に鮮やかなピンク色は、どうやら瓶ではなく薬液自体の色だ。

「おおまかにいえば義魂丸と同じですね、肉体に作用するのではなくて、肉体のうちに入ることで、霊脈に沿って薬効が巡る。その薬効によって魂魄そのものが変化する。  変化は、数時間のうちに現れマス。うまくいけば、半ば死神、半ば虚の状態を維持したまま、アナタの意思を保つことができるはずです。そこから制御・抑圧の方法が見つかるかもしれない」

「どのくらいそれが続くんだ?―――いや」

一護は目を逸らす。いちばん恐れていること、それは偶発的な力の暴走と、意思の喪失だ。

「それが失敗して、虚化に雪崩れ込むことはねぇのか?」

帽子の下、漸う浦原の唇から笑いが消える。 しばし視線が絡んで、先に息を吐いたのは浦原だった。

「―――それはアタシも一番危惧しているところですよ。  大丈夫、虚化に必要な多量なエネルギーはここでは供給できませんし、そもそも黒崎サンにはそれに備えて霊圧排出のための霊印を刻させてもらいます。何なら念のたため身体も拘束させて頂きましょうか」

自らを研究者だという胡乱な男は、もう一度笑って続けた。

「勿論、何かあればアタシたちが全力でアナタを斃します」

 

 

―――やる、とその男に向かって言葉を紡ぐのに多大な気合は用意したが、熟慮の末の結論だったかと問われればそれも怪しい。

胡乱過ぎる男に、何処が胡乱かも指摘できないほどむやみにあやしい理論を持ち出されると、警戒心は何処を向いていいのか分からなくなる。否、"何がおきるか分かりませんよ"と諸手を挙げられて、あれやそれやの偶発の可能性を尋ね続ける人間がいるだろうか。答えは全て分かっているのに。"さて。分カリマセン"

けれど人は、一縷の希望に縋り、あるいは提唱者への信頼、もしくは警戒心の麻痺から、千尋の谷底へ向かって足を踏み出す。そうして、谷底へと転げ落ちるのだ。大方の予想通りに。

 

「…おい、」 けれど、いくらなんでもこれは予想だにしていなかった。

「何だよこれは」

うめきながら、視線をもう一度落とす。見慣れた自分の身体が、あるはずのそこにない。 代わりに、制服の中で泳ぐ脚と。明らかに小さくなったてのひらと。膨らんだ胸と。何なのだ、とそのうめき声さえも聞きなれない、まるで声変わりする前のような。

「女、みてーじゃねぇーか、これ」

「あらースミマセンね、これは…薬が身体のほうに効いたっぽくて」

「いや、おい待てよ!身体には作用しないって言ったじゃねーか!!しかも何だよ何で女の身体なんだよ!」

胸倉を掴まんばかりに伸ばした腕は、ひらりとかわされる。届いたはずのそこに、長さが足りない。

「いやー何分理論上そうなるはずとしかー」

「ちょ、てめふざけんなすぐ戻せよ!」

「それは勿論努力しますが、いかんせん予想外な結果なモノでしてね」

へらり、と笑って扇子を振るった。

「ただこうなったのは、全てアタシの責任ですから。ちゃぁんと回復方法調べてお戻しします」

ふいに、扇子が空を切る。一護の手首を狙ったと見えたそれを避けた瞬間、背後に立たれて左腕を捻り上げられた。体格のうえでは決して劣勢を覚えなかったはずのその腕が、まったく振り離せない。掴まれた前腕が、すっぽりと浦原の掌に収まることに驚愕する。

「ただ、申し訳ないが時間をください。―――24時間。 それまでには、絶対に元に戻る方法をみつけてご覧に入れマショ」

 

 

 

「それでなんで僕のところにくるんだ君は!」

石田雨竜宅へ押しかけて泊めろと頼めば、案の定怒鳴りあいになった。

「しゃーねーだろ!帰れねーよこんなんじゃ!!」

当然である。いかな常識外れの親兄妹といえ、高校生の息子ないし兄が性転換して帰宅すれば大騒ぎどころの話しではない。しかも翌日には元に戻る(予定)のだ。よくて正気、悪くすればなりすまし詐欺を疑うところだ。帰れるわけがない。

浦原商店の面々でさえ、、泊まって行けとしきりに薦めた。

それに従わず強いてでてきたのは、ひとえに浦原への反発と意地だ。

テッサイは強面ながらもてなし上手だし、夜一は同性の扱いがまともか否かという懸念がありながらも、まごうかたなき女性だ。こんな事態にあって、何が一番頼りになるかといえば、周囲に不審を与えない振る舞いを教えてくれる先達だろう。実際、真っ先に衣類その他最低必要限の諸々を整えてくれたのは、夜一だった。

(…感謝、してないわけじゃない)

「…とりあえず、頼む。ウチに連絡してくれ。この声じゃ絶対怪しまれる」

「…」

石田はしぶしぶ、といった様子で携帯を受け取る。"自宅"と表示されたままのそれを見て、もう一度黒崎をひと睨みして、自分の電話に向かった。

(やっぱりだ)

―――コイツなら、掛け値なしに―何だかんだと文句は言うにしろ―自分を助けてくれる。そんな事実を確認して、喜んでいる自分がいる。

不本意な嬉しさに頬が緩むのを認めたくなくて、携帯に視線を戻す。視野には、父親と通話する石田も入った。

受話器を前にした彼は優等生然とした態度で、しかも終始穏やかな口調を保つ。時には微笑みさえする。

(俺を前にしたあの仏頂面は何なんだよ)

繕うどころではない攻撃的な態度ととりつくしまのない冷たさと、そういうものを黒崎に対してだけ剥き出しにして、しかしそれだけでは、決してない人間だと、黒埼は既に知っている。

「…とりあえず、風呂に入ってしまったから連絡が遅くなりそうだということにしておいたからな。メールぐらい自分で送っておいてくれ」

「わり」

一護の手に戻ってきた携帯は、ほんの少し温まっていた。所在無く、それを弄う。

膝を揃えて端坐する石田につられて、ぎこちなく膝を折っている。

「それが終わったら、浦原さんちに戻ってくれ。…送るから」

「泊めてくれ」

「駄目だ。帰ってくれ」

「…なんでだよ」

「今の君は普通の状態じゃないだろう。何が起こるかわからないし、何か起こったときに僕じゃ対処できない」

正論だ、と一護自身も思う。

ただ、

(此処がいいんだ)

「…今まだでって虚化を制御できない可能性はあったし、そんなときでも泊まったりしてたじゃねーかよ」

「それは避け得ない事態に対しての無理解と諦念だっただろう。今回のそれとは―――」

不意に、石田は口をつぐんだ。嫌味なほど頭の回転が速くて弁のたつ彼には珍しく。

「…違うな。すまない、黒埼。  正直僕も戸惑ってるんだ。霊圧や他の何処を見ても君は黒埼だけど、どうしても違和感が拭えないし、どう対峙していいかわからない」

(そうか、コイツもなのか)

拒絶にも思える言葉が、すとんと、胸に落ちた。 浦原商店の面々は、経緯を目の当たりにしているとはいえ、あまりにも自然に少女の黒埼を受け入れた。一護自身の驚愕と自分に対するいぶかしみを置き去りにして。

石田の秀でた額に指を伸ばす。首を捻って逃れようとするのを抑えて、一護は眼鏡を抜き取った。

「くろさ…」

左手で瞼を塞いで、自分の額を石田のそれに押し当てた。

「…俺だってわかんねぇよ」

腕の下で石田が身体を硬くしているのが分かる。それを無理矢理抱きすくめたりもしていたはずなのに、この腕はあまりに細い。

「なぁ。お前ならわかんだろ、俺の霊圧。  前と違うのか?」

てのひらの下、石田が姿勢を正す。ややあって答える。その言葉に安堵がにじむのが、ひどく嬉しかった。

「…いや、間違いないな」

「そっか」

安心したぜ、と冗談めかしてこぼした言葉に、どれだけの安堵が感謝がこめられているか、伝わるだろうか。

合わせたままだった額をずらして、首を抱いた。 くろさき、と声が聞こえる。離せ、という合図だ。

(誰が離すかよ)

触れてたいと思った。他の誰より、コイツに。

憎むといい殺しあえといい、その癖に黒埼一護という自分を真摯に見つめ、認めた少年に。

 

近づきたいし、確かめたいのだ。いつだって。

「―――そいやさーおかしいんだぜ。身体のかたち変わってんのに傷は消えてねぇでやんの」

膝だちのまま、ホレ、と裾をたくしあげると、大わらわで手を押さえてくるから。可笑しくなって噴きだした。

「おい待てって、眼鏡壊れる」

「眼鏡返せ!!その前に、シャツをめくるな!」

「つか、すげぇな!ホントに胸ある!」

「見せるな!開けるな!バカか、君は!!」

眼鏡を後ろ手に、追いすがってくる腕を掻い潜って、もう一度腕を絡めれば、石田は朱に染まった顔を逸らして、腕を掴む。

「そっかーお前フェミニストだったもんな。無理矢理引き剥がすとかできねーよな」

「君だと分かってるから容赦しないけど…ね!」

語尾が跳ね上がったのは、掴んだ手首をそのままに、自身の身体を勢いよく遠ざけたせいだ。立ち上がって身を引こうとするのを、黒崎は体重と腕力を利用して引き倒す―――つもりだった。

「―――うわ」

けれど、慣れない身体は予想よりもずっと軽く、そして非力だった。縮めた腕に逆に胴が持ち上げられる。不安定な体勢に、

(やべ、眼鏡潰すかも)

咄嗟に後ろ手のそれを庇おうとして、さらに均衡を失った身体が畳に崩れる。 しかし、備えた衝撃はない。

「―何やってるんだ、君は」

閉口した、と言わんばかりの声は、耳のうしろから。

腰に回された腕と掌とで支えられる。その体勢のまま黒崎の身体を下ろす仕草は、やはりひどく慎重だった。促されるままに膝を曲げれば、意図せずして、石田が咄嗟に踏み締めた脚を跨ぐかたちになる。

(あ、近い)

常であれば、こんな失態を見せようものならば、力のかぎり罵倒されるところだ。『バカか!!バカなんだな?!犬でもできることを何故やらないんだ!』

けれど、「…驚いた」 溜め息混じりに呟く声が、本当に安堵と戸惑いを滲ませている。

「本当に、細いんだな」

動きを止めたその体勢は、むしろ常には自分が石田にとらせているそれだ。そのことに妙な気恥ずかしさを覚えて、手荒く黒髪を梳く。 掌に感じるその熱も、皮膚をくすぐる髪の感触も、すべてが自分を黒崎一護だと、告げる。

(俺は、俺だ)

自分だけが知っているであろう石田の姿態と言葉と、魂のかたちと。彼だけが知っている自分のそれと。

「おまえさ、」

見やれば、桜色の耳朶が目の前にある。

(コイツ耳も弱いんだよな)

「触りたくねぇの?」

吐息でくすぐるように笑いかけてやれば、総毛だって、硬直と弛緩の漣が立つのが見てとれる。 掴まれた腕を重力のままに下ろせば、畳の上で指がぶつかる。絡めて掬えば、緩く握り返してくるのが愛しくて、それにくちづけた。

「触れよ」

「…馬鹿言って」

「俺は俺だろ」

笑い捨てて、右手で背筋を撫で下ろすと、シャツの背が反って頤が上向いた。晒されたそこを甘く食めば、押し殺した吸気が音を立てる。 上向いた唇を追えば、観念したように唇を合わせてきた。同時に、乱れたシャツの上から、細い指が脇腹をなぞる。こそばゆさに腰を引けば、緩く絡んでいた右腕が、括れを確かめるようにそこを撫で下ろした。

あるかなしかの刺激に、快楽を直截に享受する器官がないと今更気づいて、うろたえる。身体の底から、もっと欲しいと叫ぶものを、どうすればいい。

逡巡は、石田の頬を押さえるように伸びた手に現れた。無意識に押しのけるようする動きを、けれど石田は柔く阻んでするりと腕の内側に忍び込む。上腕の内側にくちづけて、笑った。

「やっぱりなんか変な感じだ…」

いいから続けろ、と抱えた黒髪に囁いてボタンに指をかける。競うように下着の留め具に手を伸ばす左手で、銀鎖が小さく音を立てた。外す間も無く、手首に纏わったままのそれ。 余裕をなくして膚を探る相手の指に、唇に、そして石田自身が欲を感じているという事実に、奮立つ悦びを感じている。

浅ましく相手を求めるこころは、見知ったものだ。

「なぁ、」

自分の手を石田に感じさせて、快いと覚えさせたことに、誇らしささえ感じている。

けれど、その歓声よりも先に身の内にわきたつものに、流されそうになる。石田の指の、まだ慣れないレース越しの感触に、肌が粟立つ。輪郭をなぞられて、石田の触れた場所に血が集まるのが分かる。身体を支えられなくなって、力の篭る腕を、彼はどう思うだろうか。擦り合わせられる腿を。

「―――ちょ、まて!ちょっとタンマ」

堪えきれずに、制止をかける。肩を突いた肘の分だけ、距離が開く。

「…君、僕がそう言ったとき大体嬉しそうに先に進むよね…………」

「それはわりぃって!いや、そうじゃなくてさ、」

沽券だとか、矜持だとか、そんなもの捨ててしまえばいいと思うくせに、相手に翻弄されるのは、こんなにも怖い。

「きもちい、んだけど、お前、こんなん何処で覚えてくんの…つかその手つき超やらしーっつうか…」

「バカ」

(馬鹿だよ、お前がそうしてんだよ!)

石田の頬が、もう一度朱に染まる。鮮やかなその変化に、既視感。

「君がいつもやってることだろ」


「…あのさ、人間の発生過程を参考にしたって、それ」

「あぁ?」

「性分化のことじゃないか? もしかして」

「………………………なん…だと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………誰得でしょうね、この構成。

勿論本人はノッリノリです。えぇ。絵まで描くくらいに。

 

多分どっかで女体化というのが面白いらしいと聞き込んで、電車の中でぽちぽちやってみたんだとおもいます。

(後半はPCで加筆ですよ、念のため) 本当はJimdoに配慮して別サーバにあげようと思ってたんですが、やり方全然思い出せなかったそれ程でもないかなと。…でも、凸凹を直接描写するより、雰囲気エロのほうが恥ずかしいかも知れん。

 

 

これも不思議なことに、何の気なしにPCD聞き始めたらするっと書けました。裏テーマはPainted Windows と、molfish の The fools go marching in だな。”毒入りの林檎くださいと 実は魔女に頼んでました”

 

Don'tcha の例もあるし、なんか親和性あんじゃないのか、PCD。

 

 

どうでもいいですが、描いてるとき何の疑いもなくフードが必要だと信じてましたが、フード被ってんのは赤頭巾ですね白雪姫じゃないですね。