<最初に言い訳>

ギャグのセンス無いのはわかってるんだよ!! でも好きなんだ!!(読むほうが。でも飢えると自給するしかない)

 

だいぶ昔に書いたやつですね。

少しでも落差をつくろうと思って冒頭耽美っぽくしてるのが我ながら涙ぐましい。。。。

 

 

 

 

 


 

「――――最後にほめておこうか。検査のためもっとも長く手をふれたとはいいえ、完全催眠下にありながら、僕の死体にわずかでも違和感を感じたのはみごとだった、卯ノ花隊長 

 

 

Exquisite Corpse

あるいは尊厳を剥ぎ取られた玩具

 

 

 

 

 

 

 

朝まだき、悲鳴が靄を裂く。

腹を割かれ、己が刀でその身を吊られた遺骸の周囲、集った死神の意思伝達系統は混乱を極めた。何故、誰が、誰何ばかりが答えのないまま投げ出される。砂場に棄てられた蟻の群のようなその様を見やる視線が、三対。

 

裾を翻し、声をあげて奔る死神の群れを見下ろす塔の窓辺、”殺された”男は酷薄な目元に笑みを刷く。

「今の僕は、誰にも認識し得ない。彼らは鏡花水月の周りで騒ぎ、葬送の舞と犯人探しに奔走するだろうね」

何も知らずに死んでゆくのはさぞ幸せだろう。

呟きは美酒のように空気に溶けた。呼吸するものを死へと誘う粒子となって。

「さて、私はしばらく瀞霊廷に籠もる。後のことは任せるよ」

「――そのことですが」

東仙要が、慇懃に言葉を挟んだ。その口調に僅かに緊張が走るのを見逃すものも、またそれに驚くものも、此処にはいない。

「遺骸が四番隊において検査されることは予想の通りでしょう。しかし、刺殺の偽装を鏡花水月の幻覚作用に全て委ねてよいものか、ご再考頂きたいのです」

「旅禍の手による死傷者に対する処置が、我々の既知のそれとは異なっていました。鬼道による処理に、現世の理論を応用したらしく、詳細については私も掴みかねております。それがどれほどの探査能力を持ちうるかも」

「…このままでは、露見の可能性があると?」

「………」

藍染の視線に耐えかねたように、東仙は面を伏せた。一瞬の沈黙を破ったのは市丸だった。

「――危ない橋は、渡りとうありませんなぁ。

四十六室の方はすぐにカタがつきますやろ。一応その後遺骸のほう見張っといたがええのんとちゃいます?」

「そうだね…」

瞬時、東仙に柔らかい視線を投げた後、頷いた。

「こちらに、君を残す。解剖の開始時刻がわかったらすぐ連絡を。―――ギンは僕と四十六室へ」

死神は無言で腰を折った。

 

 

「―――けどなぁ、自分の身体が弄られんの見るなんて、どうにもぞっとしませんわ。よう平気ですな」

「仕方ないな。要が不安がるくらいだ、何か在るかもしれないからね」

鷹揚な笑いのまま。

「いずれにせよ、所詮解剖に過ぎないがね」

『――十五:〇〇、ただ今より 藍染惣右介司法解剖を始める。執刀主幹は四番隊卯ノ花烈、副幹は…』

(始まりましたわ)

ひそめられた呟きが楽しそうに聞こえたのは、気のせいだったろうか。いずれにせよ虚像とはいえ自分の裸体が衆目に晒されていることに、居心地の悪さを感じた。

(…術衣かなんかないものだろうか)

『なお、今回貴重な隊長格の霊体における解剖につき、隊士6名の傍観を許可する。隊士は、私の指示により機密事項としたものについて、その漏洩を…』

(あっらー、藍染はん、教材にされとりますが…)

(……………確かに隊長格ともなればその遺骸とはいえ入手困難な…検体だ。機密防止の観点からは、些か軽率と言わざるを得ないが)

憮然とした声になるのは止めようがない。

『男性、外見特徴は特になし、傷病歴、特段なし、勇音、昨年の検診の測定値を』

紙を捲る音と、数値を並べるはっきりした声が響く。

『内診の結果は後にしましょう。外傷の精査から入ります。――まずは本人の同定から。誰かこの検体の目の色を知っている人は?』

『………』

(――茶色!ハシバミ!!穏やかな琥珀って評判だったろう!?)

(ちょ、聞こえへんけど黙ってくださいよ)

『検診の結果を利用しましょう。次に頭髪』

手袋をはめたたおやかな指が前髪を梳く。

『地毛ですね』

(え?そこ!?ソコ疑問の余地ないだろう!?ナニ僕かつらだとでも!?)

(………前から疑われてたの知らはらんかって…?)

『皮下組織ごと採取し、後ほど薬物解析を行います』

小刀がひかり、正方形に皮膚を削いだ。―――眉間の真上、額の中央である。

(止めて!その場所まずいでしょ!!)

(まぁまぁ、真中分けやないさかい隠れますって…)

(だからって!目立つ所避けるだろう普通っ!)

押し問答の間にも着々と処置は進む。

『同定ならびに外傷検査は以上。次に死亡推定時刻の判定は、まずは瞳孔拡張と死斑等による…』

『検体は頭部を上に直立に近い姿勢で固定され、夥しく出血していました。この場合、検体が中年であることを考え合わせると死斑はどこにどのように現れると思いますか?』

(ちょっと待てえぇぇぇぇぇぇっ!中年?中年て言った!?今?この僕が!?)

(…どうどう)

『――その通り。そして、この場合それすらも殆ど認められないことから、死亡後の経過時間がそれ以下だということが分かります』

『ならば、』

常と変わらぬ、穏やかな口調のまま厳かに体温計を取り上げた。

『現時点で最も信頼できるのは、直腸内体温の推移と考えてよいでしょう』

藍染が目を剥いた。

(…ちょっと、まさか)

(あーあ………)

『凪賀田(助手その1)、検体を横臥姿勢に』

(止めてください、卯ノ花隊長お願いします)

(……)目を逸らす。

『さてこれで。――勇音、遺体発見直後の計測結果は?』

(えぇっ!!もう採ってあるし!)

(現場で検温したんなら衆人環視やなぁ…)

藍染は静かに涙した。

 

『司法解剖においては、この通り前掛け状に胸部・腹部の皮膚ならびに筋組織を除去し…』

『このとき、固有の臭気があれば死因特定に…また、腐敗・加齢臭も重要な資料と…』

『胃内容物の消化過程も、死亡時刻の…』

『組織片は薬物・病理解析に影響を及ぼさないよう、それぞれ薬液にて固定…』

正直なところ、腹腔を空にされて中身を刻まれた自分を見るのは無理だった。

 

『あら』

卯ノ花が不意に動きを止める。

―――胸部大静脈における黄化脂肪細胞の蓄積、肝臓第二葉の胆石生成による硬化および黄疸、そして腹部脂肪層一寸超。肉片をそれぞれ摘出しながら、記録させる。

『勇音、これらの特徴から想起されるのは?』

『  症候群の要件を3つ満たしますね』

あくまで冷静な執刀医二人は、さもありなんと頷き交わす。

(―――ちょっと待って!僕の身体で何の話…)

そして厳かに宣言した。

「所謂、メタボです」

 

 

「藍染はん、そない落ち込まんと……」

「………」

「そんなんより、やることあるやろ?これから」

言いつつ、項垂れた肩に手を置くと、謀反人はゆるゆると目を上げた。

「――ほら、あれってお身体の情報そのままコピーして生成した虚像言わはったろ?てことは、藍染はんの身体もやばいってことやで。早う手ぇ打たな――――」

「そっちかあぁぁぁぁ!!」