がたんごとん

ちょっと読んだ漫画のことなど。

 


 

中村明日美子 『鉄道少女漫画』

うっわ。かわいい。やさしい。ほろにがい。

 

中村明日美子さんって、『ウツボラ』とか『Jの総て』とかの激烈に痛いやつしか知らなかったんですけど。(あ、あとpixivで立ち読み公開になってたお取り寄せ漫画はちらっと読んだ) こういうコメディタッチのもいいなぁ。

勿論かわいいといっても、賞玩して終わるかわいさではなくて、なんかこうこっちのおもひでやらなんやらに響いてくるかわいさではあるんですが。そしてみんな靭い。

 

そしてやっぱり線がうつくしいー・・・。輪郭も勿論そうなんですが、描線自体がほつれも弛みもなく一定の張力を持って伸びていく、っていう。表情も仕草も綺麗だし何かこう、すごく語るものの多い画ですし。科白もこれ以外ないという当為のことばなんだけども、けれどもちょっとした所作や目線がかけたことばやエピソードをそれ以上に語る。素敵。

 

それから、鉄道って題材もいいなと。

江ノ電って何かそれだけで牧歌的だとかラッシュはずれの小田急の生活感とか―それだけに平日に乗るとちきしょうこのまま会社バックレて逆行きゃ観光地なのにくっそみたいな葛藤もあるわけですけど―、あと江ノ島駅のあのデザインは思ってた!ちょう思ってた!竜宮城!!

 みたいな共感が読者に普遍的にあるわけじゃないですか。すくなくとも関東圏では。

 (観光地を多く含むだけに、そこでいう普遍って割と広いんじゃないかな、この漫画で扱ってる路線は。例えば関東人でなくても江ノ電は何となく知ってるだろうけど、これが世田谷線ならある都市の日常という他者の物語になってしまいそうだし、熊本市電とか沖縄都市モノレールだったらむしろ異郷の乗り物という非日常性を演出してしまいそうだし、中央線みたいに今現在ガンガンに変わってる路線だったら世代(?)によっって共有できる記憶が変わってくるし、TXなら歴史が浅すぎてイメージ(集合記憶)が形成されるまでにいたってないし。 いや私は大好きですけどねTX! 地平線のあっちからこっちまでを時速100kmで駆け抜ける電車なんて(日本では)そうは無いよ!

あと、家族モノからビアンカップルから監視者と非監視者から、いろんな関係を絶妙な距離感で描いてくれるのも好きです。