ディストピアの地平は遠く

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレはしないと思うけど現行映画の感想です。お気をつけて!!


 

 

「Elysium」
 
* まるっきり『第9地区』のBlomkamp のアタマで見てきたので、無駄に失望してるきらいがあります。たぶん。
 
 
…うー違うんだよ!求めてたのはこれじゃないんだよ!! てかこれほんとにBlomkamp??? もっとこう偏執的な描写とかギリギリな感じの諷刺とか血沸き肉躍る重火器戦とか…確かに隣り合う他者の話だけどさ!"越境"の意味も怖さもないじゃないですかちょっと!
 
こんな辺境でも、さすがにネタバレはしたくないんで、直接的な要素の指摘は避けます。
 
これはアレだ、『Alien2-劇場公開版』見た後で『同-完全版』見たときの感じに近いものがある。
 『劇場公開版』"銃器重火器の迫力すげー! クイーンの造形かっけー!!! 戦闘シーンの緊迫感堪んねー!グロの後のカタルシスのこの快感…! HorrorとTerrorの配分まじ最高…"
 『同-完全版』…その泣けるエピソード要らなくね?
 
 
造形は確かに面白いんですよ。でももっとねちっこくやって欲しかった…!
だって神経系と外部骨格の接続手術のシーンってもっと色々やることあるじゃないですか…! 吹っ飛んだ顔面組織の再生も!銃器が改造アサルトライフルなのはまあいいんだけど、もっと、もっとさぁ…だってスマートガンとか『第9地区』のレールガンとか死ぬほど格好良かったじゃないですか…。そしてそんなにマックスも社長も長官も総裁もエージェントもって浅く広く感情移入させる必要ないですって。たしかに『第9地区』は群像劇としての面白さも抜群だったけど、でも今回そうじゃなかった(それが結果的に「そうなってしまった」ものなのか意図してのものなのかは分かりません。ただ、私はその意図した結果の何かを得られなかったと思う)。
 
そういや『PROMETHEUS』の感想で"シャーリーズ・セロンの無駄遣いw"っていうコメントを見たんですけど、似たようなことを感じました。ただ逆に言えば、例えば『ドリームキャッチャー』のフリーマンみたく、「他のもっと冴えない誰かでもよかったけれども、彼だからこそこの程度の人物にこれだけの深みを持たせられた」ということにもなるのかなと。どっちだろう。。。
 
 
"二つの世界"について
確かに『第9地区』の主眼はそこに在って、Blomkampへの評価はそれを描ききったという点に集約されるわけですけれども。
ただ、『第9地区』においてはヴィカスがクリス(エビ)の側に歩み寄る(といって悪ければ変質)という過程は、その結果が理解し得ないものであるがゆえにおそれを以て描かれ、そのおそれは白人種社会から見た
その範疇外の社会(外、という混沌ではなくそこには確かに理解し得ない社会秩序がある、という地続きの不気味さ)によって裏付けられ厚みを増しているわけです。
対して、今回のユートピアとしてのElysiumは、打破すべき壁でしかない。たしかにこのエンドは「単純なハッピーエンドではない」(貧困層の流入と高コスト技術の流出と秩序維持の基盤の崩壊…から予想される将来)けれども、とりあえず当初の分かり易い目標は達せられているわけです。
 
ただ、『第9地区』を見た人間にそれが通じるのか、という。
『第9地区』の2極世界で何が面白いかって、「理想はどれでもありどれでもなくどう目標をもっていいか分からない混沌」を締め出している世界と、混沌の一部なることを自分に許容したヴィカスおよび混沌そのものであるところの南アフリカという社会の衝突/対立/相克/侵食です。
しつこいようですが、Elysiumの2項対立は非常に分かりやすい。支配権の争奪に伴う内部抗争はあっても、ひとつの王冠を奪いたいという目的は常に揺るがないし、地球にいたってはその点で一枚岩だとさえいえる。誰もハッピーエンドとしての目標値設定をできなかった『第9地区』とは全く反対です。
(ただでさえ人口過多の地球に健康と長寿を持ち込んで、結局それは地球の荒廃の加速とさらに大多数の苦患の期間を長引かせるだけではないかというツッコミを、誰も入れない)
(いや生きることが難しい世界で「生きるの苦しいよ、特にこの世界の状況事態は変わらないんだから」って言うことのナンセンスは理解していますが、そのナンセンスがナンセンスとして通じる世界とそうでない世界の対立を描いているんじゃないのか、と)
 
本当に何の共通項のない敵の打破、ってそれ IndependenceDay 以前(ヴェトナム戦争時除く)の宇宙戦争モノじゃねーか。
いや、それが面白くないというわけではなく、それをひとつのエンドマークとして迎え入れる鑑賞者はもはや少ないし、むしろその正反対のものを面白く描いた制作者になんでそれ描かせたよ、という話。でした。
 
 
あと子供と死人出しゃあ感動すると思いやがって…
 
それに、場内で配ってるフリーペーパー。やたら日本のあにめだのクールジャパンだのとの類似点推してくる上に、底のあっさい解説載せやがってきて本当萎えるんだけど!要らんわあんなもん。程度の低いもんで映画貶めんな(わがまま)
 
 
 
ともかく、例えば3年後とか忘れた頃に「またあれ見たいなぁ」ってDVDでも借りてきて、その時に面白いと思えればいいなーと願ってます。