愛してやまない Neil Marshall の第1作であります。
DESCENT と DOOMSDAY を見た身からすれば、古いな、と思うとこは多々あるわけです。
映像がスタイリッシュというには古っちいんじゃないのとかアレの動きはもっとhorriebleに――嫌悪を催させる奇異さを強調する方向に――したほうがよかったんじゃね?とか。
でもこの満足感は何だろう。楽しいんですよ、とにかく。
血や傷が、DESCENTでは身体的な嫌悪感を、DOOMSDAYではカタルシスを予感させる刺激剤になっていたのと同様に、ここでも執拗に描かれていて。でもここでの血は、鑑賞者の共感を呼び起こすものではないですよね。割かれた腹から飛び出す腸とか、焼け焦げた肉とか、それらは超現実過ぎて、私たちのなかの血肉にまつわる苦痛のイメージを呼び覚まさない。(個人的に怖いと思うのは、腹圧で収まらなくなった腸ではなく、脛から飛び出した骨です) DESCENTはそういうイメージをすごく大切にしていて、おかげで史上最もといっていいくらい怖い映画になった。(自分の経験に裏付けられた苦痛のイメージ、それは怖いですよ)
たいしてDOOMSDAYは重火器の派手さと同じようにスプラッタを使う。血飛沫は暴力と非現実と敗北の記号。
この映画の血肉は後者寄り・・・かなと。
死体がごろごろ出てくるけども、そして砦の内側に異物がコンタミし始めるという要素はあるんだけれども、DESCENTや出来のいいホラーにあるあの背中にへばりつくような怖さ、このまま見てたら狂うんじゃないかというくらい自分がおびえること、終わった後にトイレに行けないほどに残るもの、はない。きっちりカタルシスがあって完結してるから、とかでなく(だってAlienとか怖いじゃないですか)、そもそも怖くない。
だけれども、それが失敗にならない映画です。アクション・重火器の華やかさは十分でそれにあきさせないテンポのよさとユーモアがある。
但し、さっきのどうしようもない怖さ、極限状態での葛藤、そういうものを期待する人は見ないが吉。以下羅列。
・絶望しない人間を描くっていいね!!
・裏返せば、武器が減っていくとか日が昇りきるまでの焦燥、裏切りとか自分たちの策で仲間を死なせてしまった後悔と厭わしさ、もっと突き詰めれば別の映画が出来る
・アクションが進めば進むほどテンションがあがるだけでなく、楽しくなってくる
・敵の造形と演出はまだまだだったと思う。なんか人がましい。
・音楽は駄目。これだけは本当に欲求不満。昔の定型化されたアメリカ映画みたいなイメージ。
たぶんこの制作者たち、徹頭徹尾まじめにホラーをやるには照れがあったんだろうな。その方向にバカになりきれないというか。で随所にギャグやらブラックユーモアやら混ぜ込んで、それがうまくいったのって初めて見ました。
というわけで、個人的に一番の立役者は Chris Roobson 。よく見たらDOOMSDAYのMillerじゃないですか。 DESCENT と DOOMSDAY の Nora-Jane Noone みたく、こういう共通項を見つけるのも楽しい。
追記
そんなチンケな共通項じゃなく、もっと凄いこと発見しました。
Dog Soldiers のwerewolf = Descent のcrawler(クリーチャー) = Doomsday の Sol = Craig Conwayでした
凄ぇ!
続けて見ると役者さんの怪物としての成長が詳らかになります。うそです。最初っから全力全開です。